企画展は衣替え。アニメーション映画 & 70年前の自主上映
さて4月5日から企画展が全面的に模様替え、これから夏へと向かう3か月間はアニメーション映画資料展を松永文庫所蔵のコレクションからご覧いただきます。
比較的オールドファンの多い松永文庫の来館者層ですが、ここ30~40年ほどの間に日本のアニメーション映画の状況が大きく変わったこと自体は既に皆さんもご承知の事でしょう。特に昭和の終わり頃に巻き起こったアニメブーム以来、子供向けだった漫画映画は大人の観客も対象に含めたアニメへと大きく様変わりしていきますが、本展示では劇場で長編漫画映画を定期的に製作・公開する先駆けとなった昭和30年代の東映動画作品から最新の劇場公開作までをご紹介。
今や日本のアニメの代名詞になってしまった感のあるスタジオジブリと宮崎駿には1コーナーを使って、懐かしいクラシック・ディズニー作品はピノキオ・不思議の国のアリス・眠れる森の美女・おしゃれキャット・ジャングルブック・ダンボ・わんわん物語・101匹わんちゃん・シンデレラ姫(誤植じゃないですよ!“姫”)等々の作品をブエナビスタなんて不粋な配給名ではなく初公開時の日本RKO版パンフレット類でという珍しい構成で展示しています。今回の資料で、公開当時に新潮社から出たピノキオの子供向け絵本の訳者は村岡花子氏だと知りました。嗚呼、なんてタイムリーなんでしょう(笑)。
アニメ関係の展示以外に、今回特に注目のコーナーが。それは「昭和20年代の福岡における高等学校・大学校の自主上映パンフレット」。
タイトルの通り1945年の敗戦後、堰を切った様に欧米の名画が輸入公開されるようになると、好奇心と若き情熱にあふれる学生たちにとって、未知の世界の新たな息吹きを感じさせる外国映画こそが、時代の最先端をゆく文化そのものとなり、各学校の映画研究会や新聞部、美術部などが映画鑑賞会を主催し、映画館もまたそうした場を学生に提供する機会を設けました。
今回の展示内容は、文化祭や壮行会など様々な形で行われた学生たちの映画鑑賞会で配布された手製のパンフレットの数々。当時の事ですから当然ザラ紙に謄写版、ペラ一枚が当たり前の粗末な造りなんですが、それが一層学生たちの熱意と困窮の時代を思わせます。
保存状態も良く、よくぞ今までこんな資料が残ってくれていたものだとスタッフも驚きを隠せません。 実際にこのパンフレットを作製した方々となると既に百歳近くになられるはずですが、九州大学をはじめ福岡商科大・西南学院大・修猷館高・筑紫中央高・精華女子高・福岡学生映画連盟・福岡高校美術連盟といった校名・団体名も読み取れます。
70年の時を超えて、当時を知る方や関係者の後輩の皆さん、二度とはないかもしれないこの機会に、歴史に刻まれた先達の青春の軌跡をぜひご覧になられてください。
wriiten by おりおなえ