8月のマンスリー上映と展示について
学生さんも夏休みに入って、
門司港レトロ周辺も平日休日を問わず賑わう昨今、
我が松永文庫関係者たちはといえば、
すでに大筋の決まりつつある秋の「関門映画祭(仮)」準備に、
さらには門司港レトロ事業20th関連にと、忙しくしています。
特別ゲストの方の予定も続々決まっていて
映画祭の詳細はもうすぐ発表出来ますので、乞うご期待!
毎年この季節の松永文庫では、
この場所ならではの深い鎮魂の想いを込めて行われるのが、
「平和を願う戦争映画資料展」なんですが、
8月のマンスリー作品も展示に対応して、
原作:火野葦平、監督:田坂具隆のヴェネツィア映画祭受賞作、
名作の誉も高い「土と兵隊」昭和14年:日活と決まりました。

田坂監督自身が大陸での行軍に帯同取材した本作は、
当時の歩兵の実際が、今観てもリアルな描写で、
軍の協力のもと、実包も使用した戦闘の迫力も特筆すべき佳作です。
何よりのちの戦争映画の多くに影響を与えていて、
一兵卒の視点から描いた戦争映画の先駆としては、
名作「西部戦線異状なし」にも並ぶものとして、
映画史上にもその名を残しています。
初めて本作をご覧になった方々の多くは、
驚くほど淡々と進行する物語をドキュメンタリーのようだと云います。
声高に戦争の意義を主張するでもなく、
一人一人の兵隊たちがどんな思いで居るのかに寄り添い、
小さなエピソードを積み上げるような語り口は、
当時軍部が支援した映画の中でも異色なのですが、
くり返し困難に立ち向かう兵士たちの地道な姿は、
(まして其れが当時の観客の肉親知人たちの立場であれば)
観客たちの感謝の念を素直に呼び起すものだったでしょう。
それが原作と本編双方の優れた視点であり、
戦時には世論の支持をあつめる手段でもあったという事です。
プロパガンダだ、煽動だと一括りに云うのは簡単ですが、
優れた作品が人の心を捉える事そのものは自然な事である以上、
これはわれわれ自身がくり返し考えなければならない問題。
誰かの所為にして済む話ではないのを、どうかお忘れなく。
でも、 守るだけでは不安だよねー?とか煽る人は、
いったい何処を目指しているのか言わないとね。(独り言です…)
ともあれ、
8月23日日曜日、いつもの14:00から、
いつもの2Fホールでお待ちしております!
某サイトでぴあ先行にも応募した軟弱者、
おりおなえでした。