シンポジウム「地域文化としての映画」1

10月15日今秋の目玉企画シンポジウムに多数のご来場アリガトウ!
かねてから後進の育成・文庫の基礎固めに腐心してきた松永室長の
希望通り、今回の企画は凪恵美学芸員をはじめとする室長以外のスタッフの手によって、一切が計画され、実行・開催に漕ぎつけたもの。
冒頭で室長がうれしそうにそんな経緯を説明して初めてのシンポジウ
ムは幕を開けました。もったいないので、数回に分けて、発言の大要
を採録&まとめでお届けします。文責は不肖おりおなえ、
まずはOPの凪学芸員パートから☆
真鍋:
『天候に恵まれまして、我々が予想していた何倍もの方にご来場いただき、大変喜んでおります。今日は松永文庫に所蔵されております、現在展示中の中村上コレクション資料の映画史上の位置付け、あるいは地域の文化史の中での位置付けについて、それぞれ専門の先生方をお呼びしてお話を伺いたいという事でこういう場を設けさせていただきました。
わたくし、司会進行を務めます北九州市立大学の真鍋と申します。』(拍手)
『これだけまとまってですね、映画館を経営されていた方の資料が寄贈されるという事は大変珍しい事でありまして、それが例えば映画史の研究者、あるいはアーカイブの専門研究者、あるいは郷土史の研究の立場から、どのように読み解かれるのかという話をしていただく事になります。もちろん展示のパネルの中で、その資料の解説は成されているんですけれども、今日はそのパネルの中におさまらない色々なお話を聞けるのではないかと思って、私も楽しみにしております。それではさっそく始めたいと思います。』
○最初に凪学芸員から、資料が当文庫に寄贈された経緯が説明されました。
平成25年8月、市中央図書館資料課からの電話で、市民からの寄贈があるという。やり取りする間に「実は他にもよく判らないものがたくさんある」?
その後手続きを経て一週間後、まず5ケースの段ボールが文庫にやって来ました。

凪学芸員:
『最初の段ボールを開けた松永が手にしたものが、「松永武」の印のついた茶封筒でした。
もうビックリしまして、不思議な縁もあるもんだね、などと盛り上がりながら荷を出してゆくと松永の顔つきが変わってきて、もう無言になって全部出してしまった。
そして最後にひと言。
「すごい、これは只者じゃない」
その場ですぐに「残りの物、すべて引き取ります」と電話したんです。』
○その後届いた荷が30ケース、足の踏み場もなく人手も二人だけ、急きょ臨時にアルバイトを入れて作業が始まります。埃だらけの古い資料は傷み易く、神経を使う大変な毎日の中、特に室長は誰かが声をかけなければ食事も摂らない程の勢いで、この間ほとんど休みも取っていませんでしたが、本当に愛おしそうに資料を扱う室長の姿に、皆見て見ぬふりだった、と語られます。
○凪さんは松永室長と中村さんのコレクションでは時代の幅が違うので、全く同じ資料がある訳では無いのに、保存する物を見極める視点と云うか、共通点を感じると言います。
これは!という重要な資料は複数残す。これは二人とも同じ事をやっています。
松永室長はよく「映画は民間伝承」、映画を知るためにはいろんな事を識らねばと云い、
他人には一見どこが映画につながるのか分からない資料・収集物も多数ありますが、
中村コレクションもその範疇は古典芸能から大衆演劇まで多岐にわたります。
中村さんは生前、映画図書館のための用地まで準備しており、松永文庫の前身はやはり松永武の自宅で開館した私設映画図書館でした。
「どうやって集めたんですか?」の問いに「集めたんじゃなくて、集まった」と返す室長。凪さんは、中村さんもそうだったんじゃないのかな、と思うそうです。
○大まかな整理が進んでゆき、寄贈資料が約8000点に上ると判明すると、取り急ぎ皆さんにお披露目をする運びとなり、平成26年9月~翌1月に最初の企画展示が催されて、
期間中37000人のご来場を頂く大好評展示となりました。
○今見てもカラフルな当時の門司の映画館各々のチラシのデザイン。戦争に向かう世情や港町の賑わいが伝わる貴重な郷土資料です。番組通知綴は大正12年の映画フィルムの流通を記録した台帳。摘要欄には上映済み作品の送り先として平壌や台北などの地名も見られ、当時の世情を伝えます。
凪学芸員:
『松永文庫では中村上さんの寄贈資料を展示するにあたって、大正期から戦中戦後に至る本当に貴重な資料の数々、そして映画館主ならではの珍しい資料、時代を越えて映画界を取り巻く作り手・伝え手・受け手の様子を鮮明に伝えるものでありますし、さらには北九州の文化を伝える素材としてもその重要さを痛感して参りました。
このたび松永のコネクションに中村上さんの資料が加わった事で、大正期から現在に至る100年の資料が揃う映画芸能資料館になりました。これからの松永文庫が資料館としてどのような位置付けをされ、地域にとってどのような役割を持つのかを改めて考え直して行かなければならないような時期に来ているのかな、と感じています。
本日は当館を様々な側面から応援してくださっている先生方にお話しいただくいずれのテーマも興味深く大変楽しみにしております。その中で松永文庫の向かうべき、期待されている方向についてご意見を頂き、その意思を共有できる場になればと考えております。本日はよろしくお願いします。』(拍手)
○上々の雰囲気の中、最初のパネラー我らがアイドル凪恵美ちゃんのターンをお送りしました。続いては映画史研究者の上田学さんのご登壇ですが、以下次号!(つづく)