2月のマンスリーシアター

長谷川伸という名は、時代劇の古典と縁のない若い人たちには、
もはやなじみの薄いものになりつつあるかもしれないと思う。
わたしの場合は小学生の高学年の頃放送された「長谷川伸シリーズ」。
西村京太郎、戸川幸夫、平岩弓枝、山手樹一郎、山岡荘八、池波正太郎らの師であり、
乱歩や不木とも交流した大衆文学の父と言われる大作家である長谷川伸ですが、
わたしの幼い頃のテレビの世界でも絶大な存在感を持ち、
大人たちが夢中になっていたTV時代劇の多くに、
「原作」という一枚看板を掲げていたこの名前をよく覚えています。
とはいうものの私とて長谷川伸と同じ天を戴いた期間はわずか半年、
偉そうに語れる筈もない世代の身で、本来ならば知ったかぶりなどせずに、
戯曲や演劇・歌舞伎にも造詣の深い松永室長辺りにご出馬願うのが筋なのですが、
あえて私なりの長谷川伸への想いを書いてみたくなったんですよね。
前述のオムニバスTV時代劇シリーズは代表作のほとんどを網羅していて、
豪華なラインナップが当時でも話題でした。斜陽化する東映がTVで見せた意地というか、
後になって有名な時代劇や股旅物(というジャンル自体が長谷川の創作)の大半が、
実は長谷川作品であると気付いてゆく最初の一歩でもありました。
この時の「暗闇の丑松」はマキノ雅弘演出、衣笠貞之助脚本、長谷川和夫主演という、
もう鬼の冗談みたいな物凄い布陣で是非見返してみたい(ほとんど覚えていない・・・)。
単純明快で必ず~時45分頃になるとチャンバラが始まる現行のTV時代劇と違って、
長谷川伸以前の物語たちは不幸は不幸のままに、
わざとらしい救いなど無いダークな結末も少なくはありません。
それはこの「丑松」でも同様で、登場人物たちは色とりどりに不幸であります。
今ドキはバッド・エンディングの話自体が嫌いとか云う観客も多い中、
やはり物語の重みというか業の深さでは太刀打ちできない感あり。
深刻なら良いという訳では決してありませんが、
この味わいは安易なカタルシスに逃げていては得られないという事なのか。
是非皆さんもじっくりとご覧いただきたいと存じます。
今月は26日、マンスリーシアターでお待ち申し上げております。
高尺ドームで「See a big circle!」と言ったら手をグルグル回されたとか。
或る意味地蔵よりよっぽどコワいだろ、と思ったおりおなえでした。See you !